7月9

アメリカ・ボストンに本社を置くMARKETONE INTERNATIONAL社の日本法人、マーケットワン・ジャパン。現在、BtoBマーケティングの業界において注目されている「MA(マーケティングオートメーション)ツール」の導入支援や、営業機会の創出を目的にした組織「デマンドセンター」の構築など、最先端のソリューションで企業のマーケティング改革をサポートしています。

今回はマーケットワン・ジャパンの代表を務める山田理英子氏にインタビュー。マーケティング発祥の地であるアメリカの最新事情と共に、日本が今後目指すべき未来像が見えてきました。

激変するBtoBマーケティングの現状

ーーさまざまな企業のマーケティング強化をサポートしてきた御社として、日本企業のマーケティングの現状をどう捉えていますか?

まず、マーケティングという言葉は本来、市場でモノを売るため(買っていただくため)の仕組みすべてを示します。それを支えるのは商品企画部だったり、最後に企業と対話をしてクロージングさせる営業部だったり……。
つまりマーケティングはマーケティング部(マーケター)だけが担うものではなく、さまざまな組織が連携して取り組んでいく活動といえるでしょう。

日本企業におけるマーケターの仕事は、展示会への出展やコンテンツ展開などでリードを獲得し、それを営業部に繋ぐという「営業の補佐」的な役割として捉えられることが多いと思います。

ーーアメリカと日本でマーケターの役割は違うのでしょうか?

役割もそうですが、「マーケター自身の意識」という意味でも、「企業におけるマーケティング部の位置付け」という意味でも大きな違いがあります。

例えば、日本でマーケティング関連のカンファレンスに行くと、「営業の仕事にマーケターがどう関わるか」というテーマが度々持ち上がります。その根底には、「営業部門のためにマーケティング部門がある」という考え方があるのだと思います。

アメリカではそういった話題は一切出ません。なぜなら、「自分たち(マーケター)がセールスパーソン達をどう動かすのか」という視点で考えているからです。部の間に上下関係があるわけではありませんが、アメリカでは、先ほど申し上げた通り広義でマーケティングを捉えていて、その主導権を握るのがマーケティング部門。営業はあくまで最終工程のクロージングを担う役割という考え方が強いです。

マーケターの業務範囲は広く、売り上げに対しての責任も大きいというのが一般的な認識です。

ーーマーケターの在り方とともに、セールスパーソンの在り方も変わってきたということですね。セールスが「契約を目標に汗水流して駆け回る“何でも屋”」から、「クロージングに特化した“精鋭部隊”」に変わっていったその背景を教えていただけますか?

まずはインターネットが普及したことで営業の在り方は大きく変わったと思います。

以前は、企業や商品のことを知りたい場合、その会社の担当営業に直接連絡をしないと情報を得られませんでした。しかし、2000年になると、街でショーウィンドウを覗くような感覚で、WEBで気軽にさまざまや情報を知ることができるようになり、本当に商品に購入意欲を持った人だけが営業に連絡をしてくるようになったんです。これは、国土の広いアメリカの企業にとって大きなメリットでした。

東京の企業で働くセールスパーソンの場合、「1日3アポくらいは対応できる」という感覚が普通だと思いますが、アメリカの場合、例えばニューヨークからアリゾナに行くためには移動で3日かかるわけですから(笑)。

WEBを利用した遠隔のプロモーションやテレマーケティング、インサイドセールスといった手法が90年代から急速に発展していきました。しかし、この流れにはマイナス面もあったのです。

以前は顧客に明確な購入意欲がなくても営業と対面での接点が発生していたため、セールスパーソンは別の商品の説明もしたり、連絡がこなくなったらこちらから足を運んだり、いろいろなアプローチが可能でした。しかし、現在はWEBで情報を収集し、興味がないとそのまま接点ができる前に去っていってしまいます。

こうした状況の中、WEBの“ショーウィンドウ”で、いつ誰がどの商品を見たか把握しようとする考えが生まれ、MAのようなテクノロジーへと発展していったのです。

アメリカのマーケットトレンドから考える日本が目指すべき道

ーーマーケターが主導権を握るアメリカのマーケティング業界で、なぜMAの導入が進んでいったのでしょうか?

大きな要因として、リソースの問題が挙げられると思います。労働人口が減少し、さまざまな分野でオートメーション化の波が押し寄せています。今日のBtoBマーケティングにおいて、最終的なクロージングにはどうしてもマンパワーを使った“対話”が必要。クロージングに特化した精鋭部隊を営業のポジションに集中配置し、同時にその前工程を仕組み化することで、限られたリソースで最大の利益を生み出すという流れになってきています。

日本の場合、多くの企業は「MA=自動化ツール」と考えていると思いますが、今までセールスパーソンが“経験と汗とガッツ”でつくりあげてきた活動の一部を、マーケティング部が担うためのプラットフォームと捉えて欲しいです。

ーーアメリカのマーケティング業界で注目されているトレンドはありますか?

そうですね。これまでにも「キャンペーンの複雑化」や「コンテンツのクリエイティブ向上」など、さまざまなトレンドがありました。

今最も注目されているのは、「ターゲットをどれだけ正確に把握するか」という視点です。以前はできるだけたくさんの情報を得ることが重要視されていましたが、「Garbage In Garbage Out(意味:無意味なインプットからは無意味なアウトプットしか生まれない)」という言葉にも象徴される通り、ターゲットから外れた企業やコンタクトの情報にはなんの価値もなく、利益を上げられないマーケターは評価されません。

予測分析ツールなどを駆使して精緻な情報を収集し、売れる見込みのある相手だけに集中してマーケティング予算を使うという発想が主流になっています。この目的においても、いかに適切な見込み客情報を保有するかは、さらに重要になってきています。

マーケターが新たな領域にチャレンジできる!今がまさにその時

ーーBtoBマーケティングが激変する中、企業が抱える今後の課題はなんでしょうか?

これまでお話したBtoBマーケティングの流れの変化に対応するためには、マーケターが変わる前に、まず企業の経営方針から変わる必要があります。人事制度やプラットフォームも変わらないとなりません。企業の規模が大きいほど時間もかかるでしょう。

ーーでは、そのうえで今後マーケターに求められる資質とはなんでしょうか?

日本のマーケターは本来、「営業のお手伝いをする」というマインドが強いかもしれません。

これまでは展示会に出展した回数や、集めた名刺の枚数が評価指標になり、業務をつつがなく進行すること、そのものが尊ばれてきました。売り上げを見て結果を求めるというビジネス領域に足を踏み入れるうえで、マーケターにも営業的な資質が必要になるのです。そ

れとともに営業の業務領域は逆に狭まり、その分セールスパーソンには確実に契約に結びつけていくことが求められます。従来のBtoBの営業は、プロセスも多く期間も長いので結果に対してはブラックボックスになりがちでしたが、これからはマーケター、セールスパーソンどちらにも「どこまでコミットできるか」が重要視されるようなっていくでしょう。

ーー今後求められる人材になるために、マーケターは今何をすべきでしょうか?

まずは、「営業のお手伝い」という考え方を捨て、自分の仕事が企業の売り上げを担うという意識にシフトチェンジすることですね。そのうえで、営業が行なっていた仕事の領域に少しずつ足を踏み入れてみるといいと思います。例えば、今までは展示会で名刺を獲得するところがゴールだったとすると、そこから購買に繋がりそうなリードを取捨し、電話でフォローしてリレーションを繋いでみたり。

展示会以外の違った方法でお客さまの方からアプローチしてくれるような新しい仕組みを能動的に考えたり。営業部門に対して「今期何件リードを繋ぎます」と目標を立て、それに向けて活動してみたり。セールスマンの営業活動に同行してみるなど……取り組みやすい方法で小さな改革を起こしてみてはいかがでしょうか?

マーケターはこれまで誰もやってなかった仕事にチャレンジに挑戦できる大きなチャンスを秘めています。ネガティブに捉えるのではなく、ぜひ前向きに挑戦を楽しんでいただきたいと思っています。