10月24

viibar向田氏

急成長を見せる動画広告は、マーケターが追っておくべき分野のひとつです。各企業が動画広告に費やす予算は年々増えており、2017年は前年比163%という著しい成長を遂げ、1,374億円に達しました。さらに、2018年は約1,845億円へと増加し、その後も拡大を続けると予測されています。

【参照】サイバーエージェント、2017年国内動画広告の市場調査を実施 | サイバーエージェント

今回は、その動画広告の最前線で事業を行なう株式会社Viibar(ビーバー)の向田朋弘さん(動画マーケティング事業部アカウント・マネージャー)に、各企業の取り組み状況や成功事例についてお話を伺いました。

動画広告はどのような企業に活用されているのか?

viibar向田氏

ーー実際にいま動画広告を活用しているのはどのような企業なのでしょうか?

近年、動画広告を活用する企業の裾野が大きく広がっています。これまでBtoCサービスを展開する大企業を中心に動画広告によるプロモーションが積極的に展開されてきましたが、現在はBtoB企業もマーケティングや採用といった用途で動画広告を活用し始めています。また、これまでは「動画といえば予算のある大手企業だけのもの」というイメージを持たれがちでした。最近では、さまざまなな業種の中小、ベンチャー企業でも活用が進んでいます。

併せて注目すべき点として、オンラインだけでなくオフラインでも活用の幅が広がっています。現在は、PCとモバイル等個人が所有するデジタルデバイスだけでなく、電車やタクシー、街頭などへも動画広告を配信できます。

例えば、タクシーの動画広告の場合、性別を識別したり、時間帯ごとに表示する動画広告を変えたり、といったターゲティング配信が可能で、QRコードを表示して登録を促すこともできるので、オンラインと組み合わせることで、より高いパフォーマンスを期待できます。

ーー動画広告に期待できる効果としてはどのようなものがありますか?

認知から獲得までマーケティングファネル全体において効果を期待できると考えています。動画広告では認知施策を中心に展開される企業が多いですが、最近では獲得においても成果を出し始る企業も増えてきました。

認知の成果は、プラットフォームが提供する効果測定機能やアンケートサービスを用いて行っています。広告の非接触者と比較して、ブランド認知率や想起率が上がっているか、検索数が増えているかなどを調査し計測しています。また、より簡易な方法としては「去年の同じ時期と比べて、販売個数やページへのアクセス数が増えたか」という基準で成果を測ることもあります。

獲得は、広告に設置されたリンクをクリックしてもらったり、動画広告で使用された単語で検索してもらうことで、キャンペーンページに誘導し、登録や購入につながった件数がそのまま成果ということになります。

どの効果を狙うにしても、目的・課題に合わせてKPIを適切に設定し、そこに合わせて最適なクリエイティブと運用を行うことが、効果を出す上で重要になります。

ーー認知や獲得の効果を高めるために効果があったことがあれば教えてください。

先程も少し触れましたが、認知と獲得の両者に共通する効果の高め方として、パブリックな媒体を組み合わせるという方法があります。わかりやすくいうと「YouTubeで見たブランドの広告が電車の中でも、品川駅のサイネージでも目に入ってくる」という状況になると「流行っている感」が出てくるわけです。そうなることで、そのブランドを深く認知させたり、登録や購買につなげたりという効果が上がりやすくなります。

パーソナルなオンラインの視聴だけでなく、社会性のあるパブリックな空間でもコンテンツ視聴されることで、ブランドへの信頼が高まって、生活者の態度変容を期待できるわけです。

Viibarはどのような特徴をもつのか?

viibar向田氏

ーー御社の特徴について教えてください。

Viibarは、大きく分けて動画マーケティングと動画メディアという2つの事業を行なっています。動画マーケティング事業では、ブランドが抱えるビジネス課題を解決するため動画を軸としたソリューションを提供しています。動画以外の施策も含め戦略立案から制作、配信、効果検証までトータルで支援しております。動画メディア事業では、自社メディア「bouncy(バウンシー)」の運営や、放送局・ネット企業・新聞社などパートナーの動画メディアを開発・運営しています。

ですから「マーケティングだけの会社」ではなく、コンテンツの作り方にも深い知見がありますし、生活者がいまこの瞬間に欲しいと思っている情報についても高い感度を維持しています。マーケティングとコンテンツ制作の両事業を社内に持ち、シナジーを生み出せることが私たちの特徴であり強みです。

ーー御社に依頼する場合、動画広告キャンペーンの予算と期間はどれくらいを見込めばよいですか?

予算はもちろん目的と内容によりますが、現在は、数百万〜3,000万円ほどで単発のキャンペーンを行い、その後キャンペーンの結果を基にPDCAを回しながら継続されるクライアントが多いですね。

期間の目安としては調査や企画で1〜2カ月、制作で1カ月という感じです。急ぎの案件であれば2カ月で仕上げることもあります。その後の配信については、案件によって期間はまちまちですね。毎月クリエイティブ改善や配信のチューニングを繰り返しながら、半年以上、配信運用する案件も増えてきています。

ーー御社が手がけた動画広告の中で、向田さんが特に印象深かったものがあれば教えてください。

ライオン様の子ども向け歯ブラシ『クリニカ Kid’s』のプロモーションです。このプロモーションでは、ユーザーであるママ、パパから共感してもらい、クリニカと生活者がより深い関係を築くことを目的に取り組を行いました。

ママがお子さんの歯磨きをする時、子供はとても嫌がります。実際に子供の歯磨きを悩むママは多く、そのようなママの心を救いたいという生活者の課題感から動画の企画がスタートしました。「歯磨き中のママの表情が怖い」というママにとっての意外な気づきであったり、親子の歯磨きがもっと楽しい時間なる解決策を動画を通してママ、パパへ届けることができました。

「”こどもの歯みがき嫌い”の理由。実は…」篇

この動画はSNSなどで共感を呼びたくさんの方にご覧いただけました。また「態度調査」の結果でも、利用意向が大きく向上しました。実際に北九州市を中心にドラッグストアを展開するサンキュードラッグでこの動画を配信したところ、動画をご覧になった方の3.6%の方が、サンキュードラッグで商品を購入されたそうです。(参考:小売業の使命は「お客さまと商品のマッチング」だ

このライオン様の取り組みを通して、生活者の声をしっかり傾聴し、ブランドが提供する本質的な価値と結びつけることで、生活者のブランドへの共感と信頼を築くことができると実感しました。

嫌われる動画広告にならないために、やってはいけないこと

viibar向田氏

ーー動画広告は下手をすると視聴者から嫌われる、「ウザい」と思われるリスクもあります。そうならないために、マーケターは何に注意すれば良いですか?

まずテレビなど受動的なメディアと違いデジタルでは一般的に、閲覧の主導権は視聴者にあることを意識することが重要です。そのため配信先のメディアやプラットフォームの特性を徹底して意識したコンテンツ制作をする必要があります。「このプラットフォームにいる視聴者は、どういう視聴態度なのか?どのようなコンテンツを求めているのか?」ということを考えて、それにあわせた動画広告を運用する必要があります。

また内容だけではなく、プラットフォームやメディアにあわせたフォーマットなども意識する必要があります。

このように生活者を中心としたコミュニケーション戦略、クリエイティブ、運用を実施できれば、「ウザい」ではなく「スキ」と思ってもらうことができます。

ーープラットフォームごとのユーザーの視聴態度の違いについて、少し詳しくおしえてください。

YouTubeには一部スキップできない広告もありますが、基本的には最初の5秒が経過するとユーザーがスキップできるようになる仕様なので、この「5秒の壁」を超えられるかが重要です。

Facebookはユーザーの多くが役立つ情報を探しに来ている場です。もともとは友達の近況を知るために使うユーザーが多かったようですが、近年そういった用途はInstagramに移行しつつあり、Facebookは情報収集ツールとしての役割が強くなってきています。そのため、動画も「知って得する感」のある内容にすると良い結果につながるようです。

Instagramはデザインやビジュアルに感度の高いユーザーが多いので、クリエイティブもそういった観点で制作する必要があります。

Twitterは暇つぶし、おもしろいネタ探しの場として利用しているユーザーが多いので、動画にもある程度「ネタ感」があるほうが好まれます。拡散したいと思わせるような仕掛けをつくり、うまく機能させられれば、多くのユーザーにリーチできるプラットフォームでもあります。

viibar向田氏

最近ではTiktokというアプリもインパクトのある広告配信先となっています。特に現状ではティーン向けのプロモーションなどには有効です。ただTikTokには非常に独特の世界観があるため、クリエイティブ制作の際には気をつける必要があります。

急拡大する動画広告市場で、おさえるべきトレンド

viibar向田氏

ーープラットフォームごとにそれぞれ異なる特徴をもつというお話でしたが、全体に共通するトレンドを挙げることはできますか?

トレンドといいますか、大きな課題感としてはいかに見てもらえるコンテンツを作れるかだと思います。さらに今後動画広告市場が拡大していく中で、ますますコンテンツが溢れてくるので、その傾向は拡大することが予想されます。そんな中で、ネイティブ動画アドの重要性がさらに高まっていくだろうということがひとつのトレンドだと思います。
そのために、Viibarはプラットフォームの研究をし続けています。自社メディアやパートナーメディアと一緒に取り組んでいる動画メディアの運営からも見られるコンテンツに対する深い知見やデータが得られています。
近年、アドテクでターゲティングの精度は高まっていて届けたい人にターゲティグすることは可能になっていますが、そうなってくると見られるコンテンツとして非常に重要なのはコンテクストです。必要な情報を、適切なターゲットに、接触するタイミングで正しい文脈で伝えることが効果的な動画広告にとっては極めて重要です。

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2019年に2,000億円、2022年に3,000億円を突破すると言われる動画広告市場。全体として大きな成長が見込まれる分野であることは間違いありませんが、その中身は実に多様性に富むものです。

オンラインだけでも、YouTube、Facebook、Instagram、Twitter、TikTokなどの複数のプラットフォームがあり、デジタルサイネージを加えるとさらに複雑なチャネル構成になっています。その中で、認知・獲得につながる広告をつくるのは容易ではなく、これまで以上にマーケターの腕が問われる時代が来ると言えそうです。

撮影・文:officeTATE 楯雅平