8月6

IoT時代のボイスメディア『Voicy(ボイシー)』が見据える、音声を使ったマーケティングの可能性とは

Google Home、Amazon Echoなどのスマートスピーカーの登場により、テレビやスマホを見なくても「今日のニュースを教えて」と聞くだけで、ヘッドラインニュースや天気予報を教えてくれるようになりました。

ある調査では、5年後には音声制御可能なデバイスの普及率が50%になると予想されており、先進的なマーケターはIoT時代にフィットするマーケティングを考え始めています。Amazonが発表した Alexaスキルの2018年上半期ランキングを見ると、1位は『radiko.jp』となっており、音声を聞くラジオが見直されていることが伺えます。

今後ますますテクノロジーが進化していく時代の生活者の暮らしを想像し、音声がキーとなる未来がやってくることを見据え、音声に目をつけた会社が『Voicy(ボイシー)』です。今回、Voicyの事業や音声マーケティングの可能性について、株式会社 Voicy 広報 田ケ原 恵美さんにお話を伺いました。

ボイスメディア『 Voicy(ボイシー)』 とは?

IoT時代のボイスメディア『Voicy(ボイシー)』が見据える、音声を使ったマーケティングの可能性とは

ーーVoicyとはどのようなサービスか教えてください。

音声を届けるボイスメディアVoicyは、『人を届けるメディア』をコンセプトに2016年9月23日にスタートしました。

現在、パーソナリティが配信する番組としては250チャンネルほどです。5つ目のマスメディアを目指しており、ニュース、専門家による裏話、フリートーク、声のブログなどとして使っていただいています。Voicy はラジオや Podcast とは少し違い、スタジオレスで、スマホひとつで簡単に収録することができることが特徴です。

パーソナリティは応募者の中から審査制で選ばせていただいておりますが、ごく稀にVoicyからもスカウトさせていただくこともあります。

以前、湘南乃風のSHOCK EYE(ショックアイ)さんというアーティストがライブの後に「今日のライブに来てくれてありがとう!」という熱気の詰まった音声を配信されました。今までテレビでは放送されなかったシーンを、自分ですぐに音声で届けることができるのはVoicyならではです。

もうひとつの特徴としては、匿名の方が発信をしても有名になれることです。今Voicyのランキングトップは匿名の方ですが、アナウンサーや声優など、声の専門家でなくても、音声業界で活躍することができます。

ーー どのようなユーザーが主に使っているのでしょうか?

リスナーとして多いのは、 20代後半から30代の男性ビジネスマンで、情報収集として朝や夕方の通勤時間に聞いてくださっている方が多いです。
モニターで活字を読むというスタイルだと、自分で意図的に時間を作らないといけませんが、音声は可処分時間が多く、朝起きてから夜寝るまで、聞こうと思えばずっと聞き流すことができます。これは運営しはじめてからの発見でした。

10代から20代前半の人たちにもご好評いただいています。ラジオに触れたことがない方が多い世代だからこそ、Voicyで初めて音声コンテンツに触れて魅力を感じていただけるのかもしれません。

クローズドなプラットフォームのバズらせかた

IoT時代のボイスメディア『Voicy(ボイシー)』が見据える、音声を使ったマーケティングの可能性とは

ーーパーソナリティは審査制ということですが、どのような戦略に基づいているのでしょうか?

審査制にして、パーソナリティに良いコンテンツを作ってもらうことに集中していました。 良質なコンテンツを集めることで、プロモーション費用を抑えられます。

以前、ある音声サービスで配信者が増えすぎたことが理由で、クローズしてしまったサービスがありました。そのプラットフォームでは配信者とリスナーのコミュニケーションよりも、配信者同士のコミュニティが盛んになってしまって、ニッチな場所になってしまっていました。Voicyはそれを教訓にしています。

ーーリリース当初はどのように広がっていったのでしょうか。

Voicy代表の緒方が取材受けた記事や、口コミだけで広がりました。

また、企業との提携発表で知っていただく機会も多かったです。例えば、 Google Homeで音声配信ができるようになった時、そのファーストパートナーとして名だたる企業が発表されましたが、その中にVoicyも参画させていただいたので「この企業なんだろう?」と興味を持っていただけるきっかけになりました。

ーーその下地があり、イケハヤさんやはあちゅうさんが参加したことでバズったのでしょうか。

そうですね。そのおかげで、ユーザー数が一気に増えました。今年の2月頃にCAMPFIREの家入さんがVoicyをはじめてくださったのですが、それをはあちゅうさんが見ていて、乗ってきてくださった流れがきっかけです。
インフルエンサーの方にご参画いただくと、たくさんの方が芋づる式に興味を持ってくださります。一方で難しいと思うのは、 飽きられてしまたっとき、Voicyから人が離れていく風潮が生まれてしまいかねないなと思っています。(笑)

ーーこれまでVoicy が実施したマーケティングで、うまくいかなかったことを教えてください。

当初はマーケティング担当も広報もいない状況で、代表の緒方が一人ですべて担当していました。マネタイズでき始めたのは本当に最近です。

今はうまく拡がり出していますが、最初の1年半くらいは全然広がりませんでした。審査を通っても毎日配信してる人もおらず、 面白いチャンネルも少ない状況でした。

そういった状況をブレイクスルーできたのは、いいコンテンツを提供し続けた結果だと思います。「こんなにいいコンテンツを無料で聞けるの!?Voicyすごい!何かお返ししたい!」と思ってもらうことで、協力者が生まれる。パーソナリティが良いものを配信するために、Voicyはさまざなサポートをします。パーソナリティとVoicyのコミュニティ、パーソナリティとリスナーのコミュニティがあるので、愛が溜まっているメディアになっています。

音声は、ブログに変わるブランディングチャネルか?

IoT時代のボイスメディア『Voicy(ボイシー)』が見据える、音声を使ったマーケティングの可能性とは

ーー 音声を使ったマーケティングはどんなターゲット・どんな商材に向いていますか?

音声はマーケティングに直接的な効果をもたらすものではありません。「音声を聞いて、CV!」という使い方よりは、継続的に音声を公開し続けて、徐々にエンゲージメントを高めていく使い方が適切です。

例えば、毎日新聞さんやスポニチさんは毎日ニュースを配信。アルクさんも英会話講座を頻繁に配信しています。

ーー 多くの企業は毎日配信できる情報を持っていません。そういう企業はどういった音声マーケティングが向いてると思いますか。

社員をコンテンツにするのは一つの手法です。例えばマネックス証券さんは株に興味を持ってもらいたいという理由から社員が二人で対談している音声を流しています。

社員同士の話を聞くことによって会社の雰囲気が外にすごく伝わるんです。株に興味を持ってもらうだけでなく、新しいことにもチャレンジする発信が採用の促進にもなっているようです。

もちろんブランド価値を上げたいのか、認知拡大なのかなど企業によってニーズが違うと思いますので、Voicyから提案させていただく番組企画も変わってきます。

ーー 音声を使ったブランディング活動はどのようにしたら始められますか?

音声配信のプラットフォームはいくつかあるので、まずはどこかに相談をしてみるといいと思います。

Voicyの場合だと現在はスポンサーになっていただくか、オフィシャルチャンネルを開設していただくかの2つです。どちらもVoicy側で相性も確認させていただいた上で、費用をいただき提供しています。

Voicyは、番組企画を作って、制作をして、キャスティングをして、配信するところまで一貫でできるので、音声を使ったマーケティングをしたいと思ったらまずご相談いただければと思います。

スポンサーになっていただく際、『このチャンネルにスポンサーしたい』と指名していただいても、Voicyからチャンネルを提案させていただくのでも可能です。

例えば、後者のパターンとして転職サイトのGreenさんがスポンサーについてくださいましたが、Greenさんは IT業界に強い転職サイトなので、 IT界隈のリスナーが多いチャンネルをこちらから提案し、マッチングさせてもらいました。

今はYouTube の広告のような形で、番組内に企業の宣伝を流すことは対応していませんが、今後は可能性としてはあると思います。ですが、リスナーのことを考えると、番組中に突然入ってくる広告を流すよりも、パーソナリティを応援しているスポンサーの形が良いと思っています。

スポンサーがついてることによってパーソナリティのブランド価値が上がるので、それがリスナーにも自然に伝わるからです。音声を聞くことは習慣化されやすく耳だけで聞くものなので、耳に残りやすいワンフレーズを繰り返し毎日流すことで印象づけることができます。

動画ほどのインパクトは与えにくいメディアですが、だいたい3か月くらいは様子を見て効果を判断してもらいたいと思っています。まだできてはいないのですが、今後はリスナーにアンケートをお願いし、想起率なども見ていきたいと思っています。

ーー リスナーの習慣化を高めるために、 Voicyがやっていることは何でしょうか。

プッシュ通知で更新情報をお知らせしています。さらに、素敵な配信に出会ってもらうことにも力を入れています。 ランキングを上から順に聞いてもらったら全部面白いとか、注目チャンネルから自分に合ったチャンネルを探してもらうとか、 Voicyに来てもらったら面白いコンテンツと出会えるという場を作ることが一番です。

更新が止まってしまったパーソナリティーに声をかけたり、場合によってはコンテンツ力を上げるためのアドバイスをさせてもらったりしています。

『Voicy』は、IoT 時代を見据えたサービス

IoT時代のボイスメディア『Voicy(ボイシー)』が見据える、音声を使ったマーケティングの可能性とは

ーーVoicyは音声メディアだけでマネタイズをしていくのでしょうか?

弊社は、 ボイスメディアVoicyと、インフラ配信の事業、VUXのコンサルティングを行っています。 この3つがあることにより、音声をVoicyに配信するとスマートスピーカーやロボットにも配信することができます。提携しているスマートスピーカーは、 Google Home、 Alexa、 LINE のクローバーの3社で、 Google Homeのニュースのカテゴリーの40%は弊社が配信しています。

例えば、オフィシャルチャンネルの毎日新聞さんはVoicy に開設しているので、Google Homeに「 毎日新聞を流して」と言うとスマートスピーカーでも聞くことができます。

ーーそうすると事業としては、インフラ配信の方が主力なのでしょうか。

はい、そうなんです。ボイスメディアVoicyにチャンネルを開設しなくても、例えばスマートスピーカーだけに音声を流すとか冷蔵庫だけに流すとか、ユーザーが音声を聞くときのベストな体験をパーソナライズしていくことができるようになります。企業が、音声をさまざまな場所に配信する際に集約したいと思ってくださったら、そこがハブになるのでマネタイズポイントになると思っています。

ーーなるほど。今後は音声制御が増えていくと思いますが、冷蔵庫と話をすることはまだ多くのユーザー側が体験してないので、まずはユーザーが音声に触れるためにもボイスメディアVoicyをやっているということですね。

まさに、そうです。例えば、今後は音声配信インフラの方でクルマと連携することも考えています。他にも、行列ができるお店の横の電柱から音が出たら、それが音声広告にもなり得ます。今後はそういう世界が来ると思っているので、ゆくゆくは情報が配信される主戦場は、音声になると思っています。

ーーVoicyはもともとそこまで見据えて作ったのでしょうか。

はい。ちょうど IoT が来ると言われていたのと、 海外でスマートスピーカーが流行っていたので、代表の緒方はそのあたりを見据えていました。『5つ目のマスメディアになる』というのも、配信先が IoT になると踏んで始めました。

Voicyを共創する「オンラインサロン」とは?

IoT時代のボイスメディア『Voicy(ボイシー)』が見据える、音声を使ったマーケティングの可能性とは

ーー7月11日からは、Voicyのオンラインサロンがスタートしましたね。

Voicyのオンラインサロンがが2つ立ち上がりました。 ひとつは『Voicyファンラボ(月額1万円)』で、もうひとつは『Voicy応援団(月額1,000円)』です。

どちらも、パーソナリティやリスナーの方など、声の文化を広げたいと思ってくださる方に入っていただきたいと思います。

ーーお金を払っても何かに関わりたい、という人が増えていることは感じていますが、Voicyを一緒に広めていくことに月1万円払うというのは、 一度聞いただけではなかなか理解しがたいというのが正直なところでした。

同じ興味があり、熱量の近い人を集めた場というのはなかなか見つかりません。Voicyもこのような仲間と場を提供します。社会人のサードプレイスとして位置づけています。

パーソナリティに直接会えるとか、Voicyの社員とたくさん話せるとか、ファンクラブみたいな感じですよね。自分ができることで助けてあげたい、世話を焼きたい、と思っている方もすごく多いです。

ーーなるほど。ファンクラブと考えるとわかりますね。Voicy はまず IT に強いクラスタに広まって行くと思いますが、次はどこを目指していますか?

テレビを見ているお茶の間の方々にも知ってもらえるマスメディアにしていきたいです。

例えば、テレビ中継されていた野球の試合が終わった後、野球選手に1分時間をもらってVoicyで話をしてもらえれば、試合が終わった直後のリアルなテンションでどういう風に話しているのかがよく伝わって、すごく身近に感じてもらえると思います。

IoT時代のボイスメディア『Voicy(ボイシー)』が見据える、音声を使ったマーケティングの可能性とは

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現在のスマートスピーカーは「ラジオを流して」といような音声リモコン程度の制御にとどまっている家電が多いですが、今後はAIの進化により会話ができるようになると言われています。

「OK Google、冷蔵庫に残っているものでレシピを考えて」とスマートスピーカーに話しかけると、スマートスピーカーから「今、冷蔵庫にあるものでトマトパスタが作れます。おいしいトマトパスタの作り方をお伝えしますね」と流れてくるかもしれません。

このシーンを想像するだけで、生活者の『ながら時間』に嫌われない音声広告をいくつも考えることができます。今後、音声制御がキーになっていくと予想される時代には、音声を使った企業のブランディング活動に注目です。