12月28


「テンション高めの女子をつくる」をキーワードに、衣料品や雑貨などを企画販売している、有限会社ズーティー。神戸や横浜に実店舗を持ちながらECサイト「イーザッカマニアストアーズ」を運営しています。EC運営に当たっての考えや、パーソナルスタイリストがカウンセリングをしてくれる「zootie styling lab」にかける思いを、ズーティー取締役の浅野かおりさんに聞きました。

ネットで洋服を買うのは”タブー”だった

ーー「イーザッカマニアストアーズ」は、楽天市場の黎明期から出店されていますね。

一番最初は実店舗からスタートし、1999年にEC事業始めました。2002年に楽天モールへも出店を開始しました。

ECを始めた頃は、今のように情報に溢れているわけではなく、HTMLの教本にCD-ROMがついている本を見ながら、すべて自作しました。


ーー当時、洋服をインターネットで買うのに抵抗がある人が多かったかと思いますが、どういう工夫をされていたのですか?

そうですね。私自身、お店に行って商品を見て買うのが当たり前でした。

当時はファッションのEC事業者は、実際に服を手売りしたことのない人がいて、あくまで効率を重視したビジネス感覚なイメージでした。エンドユーザーのことをあまりわかろうとしていない。でも、本当に購買に結びつけるなら、お客さんがどんな風に買うのかをイメージをしなければなりません。

ですから、どうやったら抵抗をなくせるか、私がネットで商品を買うなら何が必要かを考えることから始めました。洋服は着ているイメージや詳細なサイズ表記がないと買いづらいのに、従来のECサイトにはあらかたのスペックしか載っていなかったんです。トルソーに洋服を着せた写真が1枚だけ載っている。「Mサイズ」という表記だけだど、普段はMかLか悩む人だったらそんなの買えませんよね。

あまり参考にならなかったので、まずは自分が買いたくなるショップを作っていきました。


大手がすくいとれない部分が見える

ーーECサイトを完全内製していた時と、楽天モールに出店した時では、どのような変化がありましたか?事業が急に伸びたなという感覚はありましたか?

お客さんの数は、楽天市場に出店してぐっと伸びました。楽天市場の中の方たちがうちの商品を気に入ってくれて、当時の楽天市場ニュースに取り上げていただいたこともあり、そんな時には販売数が伸びました。

楽天モールに出店すると、コンサルタントの方がアドバイスを下さるんです。「あそこのチーズケーキ屋さんはこういうことやって儲かっているのでまねしましょう」と。でも私は天邪鬼なので、「やだ!そういうのじゃない」と拒絶することも多かったんですね。でもこれがとても良かったと思っていて、提案をしてもらうことで自分の好き嫌いがわかるんです。お客さんのことを第一に考えた時にどんな方向が残るのか、すごく鮮明に見えたんです。

ーーショップを立ち上げた当初、どのようにリピーターを獲得しましたか?

メルマガの配信をしていました。

特に初期の頃は、購入のお礼メールに返信をくれるお客さんがいて、それがきっかけで会話が始まることもありました。よりお客さんと近い距離で接客ができたと感じています。

バイヤーやメーカーさんの気持ちを伝えたいと思ったし、運営者サイドのことを知ってもらいたいと思っていたので、自分の視点も取り入れていました。

現在もメルマガの配信は続けており、スタッフの主観と客観な情報を交えた文面を心がけています。

ーー何か参考したものはあるのですか?

あまり影響を受けたくなかったので、極力見ないようにしていました。今でもそうですけど、ノウハウやコツは溢れていて、情報を簡単に得られるじゃないですか。だからこそ個人の一人一人の意見というものが見えにくくなっていたりすると思うんです。

暮らしの中で出会う声に耳を傾ける、それが


Zootieのマーケティング

ーーECが広く受け入れられるようになったからこその変化はありますか?

大きな資本が入ってくると、やれることが増えてくると思うんですね。地道にやっていた中小零細のノウハウが一気に吸い上げられて、何でもできるわけですよね。すごいスピードでこの業界を変えていった。明らかに業界の規模感が大きくなりました。

それによって失われるものもありますよね。昔ながらの洋服店が一対一でしていたようなコミュニケーションは、売り手にその気があったとしてもECでは見えにくいです。特にファッションはメジャーな産業なので、稀有な取り組みがあったとしても目新しさは薄れます。小さな「寄り添い」がどんどん消え、事業だけが巨大化していく。例えると、ショベルカーでガサッと掬われない層だけが置き去りにされているような感じでしょうか。

ーー規模の大きさを受け入れつつも、お客さんへの「寄り添い」を守っていくことが大切なのですね。

「イーザッカマニア」としては結果的に規模が拡大してきましたが、私の身の回りには効率化の外にいるエンドユーザーが見えるので、両方の立ち位置に立てるんです。市場から置き去りにされている人たちに届けられるような価格設定と商品セレクトを心がけています。

順序立ててマーケティングをしている人には色々なご意見をいただきますよ。もっと効率良くできるところもあると思うし、まだ伸びるポテンシャルがあると思っていただけているからこそ、今のスタイルはありえないとおっしゃっていただきます。

ーー結果的に、どのような層のお客さんが集まっているのでしょうか?

10代から70代までの女性に、広くご愛顧いただいております。どの年代にも、4000円前後の中価格帯でおしゃれを楽しみたいと考えている方が一定数いるのだと感じました。中には一家3世代でご購入くださるお客さんたちもいますよ。

最低価格ゾーンのものは大手がものすごいロットをこなしながら、コストパフォーマンスを重視した商品作りをされていますよね。逆に、高価なブランドのなかには、一人でデザインから生産されている方がいらっしゃったりする。

両者の間はどんどんと空洞になってきているような気がします。

その理由は、中価格帯の洋服に対する価値をきちんと発信できてい事業者が多かったのではないかと考えています。「5900円のパンツを買うなら、ユニクロで似たようなものが1900円で買える」と考えるユーザーが多い中で、なぜこの5900円に価値があるのか、丁寧に説明をしなければなりません。

品質とデザインと、人が気持ちよく買える値段。ちょうどいいものを作るというところに、使命を感じています。日々暮らす中で、エンドユーザーの声に耳を傾けることが私にとってのマーケティングです。

ーーそのアイディアやモチベーションはどこから生まれるのですか?

ショートカットしてしまうと見えないものがたくさんある。うちの息子がどこでもドアが欲しいというんですね。開けたらすぐ学校いけるやんって。でも、その間に見える電車に乗った時の風景、会う人、季節の移り変わりが見えないわけじゃないですか。それを無駄と思うか、必要なものだと思うか。それを知ることに価値を感じられるかどうかだと思うんです。どこでもドアは上手に使えばいい。毎日どこでもドアだったら見えないものがありすぎると思うんです。

私たちはいつもどこでもドアは使わない。過程でしか見えていないものがあると思っていますから。

 究極のECとは何かを考えてzootie styling  labができた

ーーzootie styling labを始められた経緯を教えてください。

社内で、Zootieの未来の話をしたことがあるのですが、その時に、これまでのECサイトのスタイルから、お抱えスタイリストみたいなサービスに変化していけたらいいよねという話が出担です。例えばユーザーの1か月のスケジュールをもとに、決まった予算内で選んで送るようなスタイルが究極だよなぁと思いました。

ショッピングは選ぶことが楽しいという人と、選ぶことが苦痛で、着ているものに評価がほしい人、組み合わせることが好きな人、店員さんと喋るのが好きな人と、楽しみ方は多種多様です。styling labは「選ぶことが苦痛」という人に対しても有効なサービスだと思います。プロフェッショナルが選ぶことで、その苦痛を減らせるかもしれない。

百貨店や高級ブランドがやって来た従来のスタイリングサービスは、一度に購入してもらえる金額が非常に高いのですが、私たちが目指したのは、5000円のコートとか3000円の靴で、そのサービスが受けられるようなものです。「Zootie styling lab」の場合、サービス料は完全予約制で1時間2160円(税込)です。

通常のお店の接客だと1時間も接客をすると、お客さんは買わなければいけないような気持ちになってしまいます。だからあえて販売はせず、純粋にコーディネートだけを売るスペースにしました。ラボでは服を売りたいんじゃなくて、服を着ることの楽しさを売りたいし、表現したいんです。

例えば109ようなファッションビルの店員さんたちは、立っているだけで洋服選びの楽しさを表現してきたはずなんです。彼女たちを見ているだけでワクワクさせられた、あの感覚が大切なのではないでしょうか。

 ーーそれで収益に結びつくのですか?

スタイリングサービス自体では、到底ペイできません。しかしスタイリングサービスを受けたお客さんには個別のカルテを作成して、その場でお渡ししています。その当日に着た服などの情報が書かれたカルテをお持ち帰りいただくので、後日ECサイトから買っていただくことができます。ほとんどの方が買っておられるようですが、この事業自体、売り上げに直結させるためのものだとは考えていません。

ーー顧客の中には浅野さんの思いを感じている方も多いのですか?

まだまだ足りないと思います。だから必死なんですけれど、そればっかりやっていると会社が潰れちゃう(笑)。

伝えたいことを伝えつつ、日常的な業務もおろそかにはできないので、バランスが大事だと思います。

ーー今後の展望を教えてください。

服は個性を表現するものだと思うし、誰もが身に付けるものです。嗜好物ありながら必需品。ファッションの楽しみ方は、ものはすごく多様化しています。

すごくシンプルな服が流行り出したときに、この業界は震えましたよ。でも、例えば、スティーブジョブズがいつも同じ服を着ている。彼は嫌いな服を着ているわけではなくて、すごくこだわりがあって、ジーンズとタートルを着ている。いろいろ毎日選ぶ時間はコストでしかない、彼にとっては。洗い替えがあったはずだし、へたった時は新品の同じものを買った。彼を表している最たるものじゃないですか。

毎日いろんなものをとっかえひっかえしたいという価値観だったり、時間をもっと違うことに使いたい、かつ好きなもの以外身につけたくないというその人の生活スタイルだったり。ファッションは人を表すものなので、そういう文化は大切にしていきたい。

決しておしゃれな人を作るというわけじゃなくて、ネガティブに感じてる人、マイナスに感じている人をまずはゼロにできないかと考えています。多様化している価値観を受け入れながら、自分たちがどんなことでファッションと向き合っていくのかというのを考えられるような会社でありたいなと思います。

ファッションが楽しいと思っている人たちが誇りを持てるような環境を作りたい。ラボをやっていて思うんですけど、洋服の販売員はすごいです。舞台に立っているみたい。毎日自分が立つ舞台の衣装を選んでいるようですよ。見られているし、伝えたいと思っているからでしょう。あれは特殊能力です。それを私たち企業が、きちんとプロフェッショナルと認めていくことも大事だと思いますし、継承していけるような人たちがいなくちゃいけないのかなと。パンを焼ける人をたくさん育てるんじゃなくて、「パン美味しいやん!」と思ってパン屋になりたいという人を作っていかないといけない。そう思っています。